赤銅松皮菱引手

2014年11月22日

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丁寧にコツコツ作っていたお茶室の引手が無事に出来上がりました。
公家好みの書院の引手のデザインをモチーフに、小間の茶席の天袋にアレンジしています。
素材は胴部分を赤銅、菊座を銀にしてメリハリを付けました。
型物ではないので、それぞれの座金の厚みや面の取り方にもこだわって、気品のある仕上がりを目指しました。
小さく小さく作った赤銅の釘も折れずに付いてひと安心。
こういった職人仕事は中々出来る機会がないのでとても勉強になりました。
裂も聚楽壁の色と引手のデザインに合わせ、落ち着いた配色で格好良く仕上げていただいて、感謝です!
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古代ガラスを使った茶杓

2014年8月15日

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夏の茶箱に、遊び心溢れるお点前に、こんな古代ガラスの茶杓は如何でしょう?

見ているだけで楽しくなる、形や色味、パティナ(表面の銀化)が美しい古代ガラスを使って、それぞれのガラスに合った茶杓を誂えました。

 

地金には、金槌で打ち締めた銀を使っています。茶杓の形状に合わせて強度を考え、純銀、silver970、silver925を使い分けています。

毛彫りを使った櫂先の装飾や、ガラスを留めるかすがいのワンポイント、そして、金属でしか作れない繊細な表現が見所です。

真塗の棗の上に置いても傷がつかないように、裏側も丁寧に仕上げています。

 

せっかくなので茶杓袋もちくちく。今回は和更紗を合わせました。

蓮弁の茶杓 ローマングラス

 

おかげさまで写真の6本は全てご売約いたしましたが、また新作を製作中です。

タイに住む友人からもローマングラスを頂いたので、創作意欲が膨らみます。

 

今度はどんな茶杓にしようかな?

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銀盃のこと

2012年6月5日

髑髏の銀盃

 

だいぶ長い事ブログの更新ができないでおりました。
たまにはこんなのもいいのではと思い、少し前に作ったものですが載せてみます。

約3寸の銀の盃です。厚めの板から金槌で丁寧に叩き、中心部はごく薄く、縁は1.5ミリくらいの厚みから縦に落として口当たりを良くしています。
写真では見えませんが、漆のものに比べると少し高めの高台が付いています。

手に取って使う器を作る際はすべてそうなのですが、酒盃としての存在感はあり、それでいて重すぎない手取りを目指しています。

鎚目の銀盃はそれだけでも綺麗ですが、写真のようにワンポイントを入れる事でグッと引き締まります。

 

今回の盃は、髑髏。

これ実は一休禅師の逸話からのモチーフなのです。

村田珠光の師との伝承もあり、その墨蹟は茶人の間で極めて珍重される一休宗純ですが、狂雲子と号したように変わった逸話が多く残されています。

そのひとつがお正月に杖の頭に頭蓋骨をしつらえて「ご用心ご用心」叫びながら練り歩いた、というもの。

また、一休禅師の書物の中には「骸骨」という法語があり、 「人間は生きながらにして骸骨である。一皮むけばどんなに偉い人も貧しい人も骸骨でこれほど無差別・平等な姿を表したものはない。人の世はすべて虚仮不実(こけふじつ=みんな偽りの現象)だ」との内容だそう。
(ウィキペディア、大阪日々新聞より)

今回はそんな一休禅師の逸話から、杖の頭に載せたであろう髑髏をイメージして毛彫りを施してみました。
デザイン化した髑髏はモダンな印象もありますね。

 

さて、銀盃はなんと言っても冷酒におすすめです。冷たいお酒を注ぐと、一瞬でふわっと汗をかき、白くきらきらと輝きます。
お酒の入った透明な部分との対比が美しいのです。

これからの季節、凛と冷えた器からいただく冷酒は本当に美味しく感じます。

銀盃は朱盃のように茶懐石でも使う事ができますし、少し深めにすれば普段使いにもできます。お正月のお屠蘇だけ、というのは勿体ないですね。
ちなみにここまで深くすれば、ワインなども美味しく頂けますよ。

 

雪輪銀盃

 

銀の盃、お酒好きの方にはぜひ1つお持ち頂きたいものです。

 

 

 

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銅の襖引手2

2012年2月25日

銅の襖引手
銅の襖引手の制作行程、前回からの続きです。

縁の部分に必要な厚板をロウ付けしたものを、糸鋸を使い、手で抜いていきます。

銅の襖引手制作行程5

手前が引手の内側を抜いたもの、
奥が内側と外側を抜いて、内側に綺麗にヤスリをかけたところです。
さらに縁を欲しい幅とカーブになるように、ヤスリで整形していきます。

銅の襖引手制作行程6

真ん中がヤスリで整形をする前の状態です。

かなり引手らしいかたちになってきました。
しかし、この写真の段階までにはヤスリ掛けの工程があります。

ヤスリは荒目→中目→細目→油目の4段階で仕上げます。順にヤスリ目を細かくして傷を消していくのです。
上の写真の両端の2つは油目まで掛けた段階です。

油目のあとは砥石で研ぐのですが、この辺りで底板を作っておきます。

銅の襖引手制作行程7

もうどこから見ても引手です。縁のカーブは細身ですっきりした印象に仕上げています。
でも、まだ完成ではありません。

銅の襖引手制作行程8

砥石を掛けてヤスリ目や傷を消していきます。

砥石のあとは、炭研ぎをし、さらに炭より細かいクリスタル砥石で仕上げて行きます。

この段階でヤスリ目が残っているのが見つかるとやり直しです。
(ひたすら地道な作業です)

とにかく綺麗に傷がなくなるまで研ぎ上げたら・・・

 

最後は胴擦りです。

朴炭の粉をコシのある馬毛の刷毛に付けてブラッシングします。
最近は炭粉をつくる手間や炭の入手などを考慮して、炭粉の代わりに炭化ケイ素(カーボランダム)を使う事もあるようです。(試してみたいです)

研ぎ跡の曇りを取ってピカピカに仕上げます。

胴擦りには、脱脂の意味もあります。
これをしっかりしないと、色上げの際にそのまま出てしまうので要注意です。

さらに重曹で脱脂し、表面を綺麗にしたのち、

 

いよいよ着色です。

今回は伝統的な金属の着色技法である煮込み着色にしました。

煮込み着色は、煮色、煮上げ、色上げとも呼ばれ、赤銅や四分一、黒味銅、真鍮、さらには砂張といった銅合金に使われる一般的な着色方法です。
緑青と硫酸銅を溶かした液の中でグツグツ煮ていきます。

銅の襖引手制作行程9

ムラなく綺麗に着色できました^^ これ、ムラなく綺麗に仕上げるのは結構大変です。(実は胴擦りと着色だけで丸一日かかりました・・・)

しっかり研いだので、着色しただけで艶があります。

最後にイボタ蝋(蜜蝋もOK)を塗って完成です。

完成写真は記事のTOPの写真をご覧下さい。
その後、襖に取り付ける際の銅釘もしっかり着色しましたよ◎

この月の引手は、唐長さんの遠波の柄の浅葱色っぽい唐紙に着く予定です。
水面に浮かぶ月のようになるのではないかと楽しみなのです。

なんだか長文になってしまいました。

 

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銅の襖引手1

2012年2月22日

銅襖引手完成

茶室用の銅の引手をご注文頂きました。十三夜前後の月のかたちです。満月へと満ちていく、縁起の良い月の引手3種と2寸の丸引手を作りました。

 

昔ながらの方法で作る手作りの引手、ここではその制作工程をご紹介致します。

 

銅月引手制作行程1
まずは、寸法に合わせて細長く切り抜いた銅の板に火を当て、柔らかく焼き鈍し、輪にしてロウ付けをします。
ロウ付けしたロウのはみ出たところは、きれいにやすってロウ払いをしておきます。

銅月引手制作行程2

ロウ付けした輪を、当金と呼ばれる金床に当て、上から金槌で叩きながら、図面の月のかたちに合わせてカーブを作っていきます。鎚目を打ったところは地金が締まり、きらきらしています。
輪にすると、地金が引っ張られて両端が反ったようになるので、これも叩きながら修正していきます。

これが最終的な出来上がりのかたちを決めます。
叩きすぎると地金が延びて、大きくなってしまうので、注意が必要です。

慎重に、丁寧に合わせていきます。

銅月引手制作行程3

3種類、かたちを合わせたところです。

ここまでで結構な時間がかかっています。

ちなみに、今回は1つずつなので型は作っていませんが、同じかたちで数を作る場合は、手前のような木型や金型に嵌めて、かたちを整える事もあります。

かたちが決まったら、輪の幅を引手の深さにちょうどいいように調整します。
(最初太くしすぎて詰めるのが大変でした)

写真を撮り忘れてしまいましたが、

輪に底板を留めるための爪を出し・・・
爪を出すとかたちが崩れるので、再度修正をして、最終的にかたちが決まったら・・・

銅月引手制作行程4

縁に欲しい分の厚みの板をロウ付けします。ここでは2.5ミリ厚の板をロウ付けしました。これから切り抜くので、外形は適当です。

ここからようやく引手らしいかたちになってくるのですが、

長くなりそうなので続きは次回に。

 

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