薄茶器のこと

2012年1月5日

慶應好茶器

薄茶を入れる棗です。漆のものが多く、金属製のものは珍しいかもしれません。

棗の形は千利休が好んだ利休好十二器を基本にしており、例えば上の写真のように、上部だけを面取りし、ストレートな胴のものは「茶桶(ちゃおけ)」と呼ばれる形に近く、下の写真は「雪吹」と呼ばれる上下を面取りをした形です。
「吹雪」ではなく「雪吹」で「ふぶき」と読みます。

鎚目を打つことで鍛金でしか出せない肌を作り、その上から梨地加工をして古美色にしています。

金属というとギラギラしたイメージがあるかも知れませんが、南鐐(純銀)で石目のものなどは侘び道具とおき合わせても、違和感なく使えます。

また、立礼や茶箱に合わせてもモダンな雰囲気を添えてくれます。
個人的には木地のものや白磁の道具と合わせるのが好きですが、色絵や七宝ともよく合います。

蓋と身の合口部分には特に気を遣って作っています。
上下がぴったり同じ径になるのはもちろん、合口の線が出来るだけ細くなるように作るのが、師匠の教えです。

蓋を開けた中を軽い鏡面にすると、お抹茶の緑が綺麗に映えます。
外と内にコントラストを付けられるのも金属ならではで面白いと思います。
また、既存の棗から金属で写しを作ることもできます。

 


これは雪吹形の棗ですが、金森宗和の好みで「槌棗」という名前がついており、打出の小槌のように全体が丸みを帯びた形になっています。素材は南鐐(純銀)です。

金属の茶器は替茶器としても、茶席に話題を添えてくれるでしょう。

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